静岡は萌えているか「上、中、下、番外」中日新聞静岡の「しずかるNOW」です。

静岡は萌えているか「上、中、下、番外」中日新聞静岡の「しずかるNOW」です。

面白い特集でしたので、資料として残すために転載させていただきました。
番外編は「岡本健・奈良県立大講師に聞く」です。

以下 中日新聞 トップ > 静岡 > 地域特集 > しずかるNow > 記事一覧 > 2014年の記事一覧
から転載させていただきます。 【しずかるNow】

静岡は萌えているか?(上) 萌えキャラ  2014年1月30日

 アニメや漫画、ゲームなど、日本のポップカルチャーを地域活性化につなげようとする動きが広がっている。観光振興に生かす自治体があり、県内でも新たな試みが生まれている。「クールジャパン」の冠で世界の注目も集める中、“萌(も)え”始めた静岡の現場を歩いた。

◆看板娘、愛で育てて!

 赤い瞳で不敵な笑みを浮かべる「天虹寺(てんこうじ)駿河」、のどかな雰囲気の眼鏡っ娘(こ)「朝霧砂緒(すなお)」、駿河湾名産のサクラエビを持つ青髪の少女「桜野沢ゆい」。店内に一歩足を踏み入れると、個性的な「看板娘」が出迎えてくれる。
 静岡市駿河区の鈴木酒店。外観はよくある町の酒屋さんだが、陳列された四合瓶の色鮮やかなラベルが目を引く。店長の鈴木誠さん(38)が考えた美少女キャラクターを県内産日本酒のラベルに印刷した「萌酒(もえしゅ)」。口コミで評判を呼び、休日には県内外からファンが集う。

鈴木酒店に並ぶ「萌酒」。キャラクターには鈴木誠さん(左)のこだわりが詰まっている=静岡市駿河区で
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 萌酒の販売は二年前から。日本酒度の高い辛口の酒には危険な雰囲気の少女、フルーティーな口当たりの酒には艶っぽい癒やし系の女の子を…。酒の特徴に合わせキャラクターの外見や口癖、趣味などを細かく設定し、今では六人に増えた。
 以前はコスプレにもはまった鈴木さん。「若者にも日本酒の魅力を知ってもらえたら」と、花の舞酒造(浜松市浜北区)や志太泉酒造(藤枝市)など県内の老舗と交渉し、商品化の許可を得た。「ほかの銘柄も飲んでみたい」というファンも増え、萌えキャラとのコラボに手応えを感じている。

 美少女や美男子のキャラクターで商品や地域を売り込む手法は、二〇〇五年ごろから全国の自治体や企業に広まった。「あきたこまち」をイメージした少女をパッケージに描いたJAうご(秋田県)の「萌え米」など、全国からファンが押し寄せた成功例もある。

 ただオタク市場を開拓する難しさもある。焼津商工会議所は昨年四月、若い人に地元の海産物をPRしようと、美少女キャラクター「焼津海音(みおん)」を発表した。古くさい姿が「あまりにも萌えない」と逆に話題を呼び、ホームページには数日で一万件を超すアクセスが殺到。「俺がかわいく生まれ変わらせる」と、自作イラストも次々とインターネット上に投稿された。

焼津商工会議所が発表し話題を呼んだ美少女キャラ「焼津海音」
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 想定外のブームに戸惑った商議所の反応は後手に回った。関連グッズの販売や交流サイト(SNS)での情報発信を検討するうちに、半月ほどで騒動は収束。担当者は「ブームに乗って、もっと販売を伸ばせたかもしれないのに」と悔やむ。

 全国に無数の萌えキャラが生まれ、いつの間にか忘れ去られていく。鈴木さんは「キャラクターに愛情を持ち、一生懸命育てようとしなければ、成果は生まれない」と訴える。
(石原猛)

<萌えキャラ> ある商品や地域をPRするかわいらしい少女や端正な男の子のキャラクター。服装や髪形、名前などに商品の特徴を反映させ、擬人化したキャラが多い。県内には、静岡市のB級グルメ「もつカレー」をイメージした「百都(ももつ)かれん」などがある。



静岡は萌えているか?(中) コスプレ 2014年1月31日

◆商店街に驚、若者どっと

 昨年十二月のある週末、普段は人影少ないアーケード街が奇妙なにぎわいを見せた。巨大なやりを担ぐ甲冑(かっちゅう)の兵士、背中から小さな羽が生えた妖精の少女…。アニメやゲームの世界から飛び出した登場人物の姿が清水駅前銀座商店街(静岡市清水区)にあふれた。
 「まちを盛り上げるには、とっぴなことにも挑戦し、目立たなきゃ駄目だ」。商店街振興組合の伊東哲生理事長(60)らの発案で初めて開いた「富士山コスプレ世界大会」には、土日の二日間で約九千人が来場した。洋品店や青果店が並ぶ南北四百メートルの商店街で、県内外のコスプレーヤー四百人が自由に写真を撮り合い、キャラクターの気分で食事を楽しんだ。

キャラクターの衣装で写真撮影を楽しむ「富士山コスプレ世界大会」の来場者たち=昨年12月14日、静岡市清水区で
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 ただ初めての試みだけあって苦労は絶えなかった。「地元の別のコスプレイベントに日程をぶつけた」「交流サイト(SNS)で質問しても反応がない」。半年前に開催を告知すると、インターネット上に不満や不安の書き込みが相次いだ。
 SNSで主催者への意見を集めた清水区の男性(29)は「運営ボランティアを募るなど、コスプレをよく知る地元の人を活用してほしかった」と指摘する。「コスプレでまちおこしを」と声高に訴える商店街の姿は「見せ物と勘違いしている」との反感を招いた。
 「私たちの『当たり前』が、彼らの『当たり前』と違っていた」と、伊東理事長は反省する。その後、商店街は参加者のおもてなしに重点を置き、清潔な更衣室の準備や盗撮を防ぐ警備の強化など矢継ぎ早に対応した。
 ファンと地元住民の触れ合いも生まれた。仮面ライダーの衣装で東京から参加した男性は「古い貴重な商品を扱うおもちゃ屋の主人など、商店街の人とも交流できて新鮮な気分になれた」。数十種の衣装を用意したコスプレ体験も賑わい、商店主らは「こんなにたくさんの若者が来るなんて」と予想以上の反響に驚いた。
 次の大会に向けたアンケートを見ながら、伊東理事長が力強く語る。「イベントを少しずつ大きく育てたい。そのためには、私自身がもっと彼らの文化を勉強しなければいけない」
(石原猛)

<コスプレ> アニメやゲームなどのファンが、登場人物の衣装を着てキャラクターになりきる。「コスチューム・プレイ」の意味。コスプレする人を「コスプレーヤー」「レイヤーさん」などと呼ぶ。衣装や小道具を自作するファンが多いが、人気キャラクターの衣装やカツラなどは市販もされている。


静岡は萌えているか?(下) 聖地巡礼 2014年2月2日

◆アニメと街、融合模索

 掛川城の近くにある駄菓子屋「すいのや」に昨秋、小さな変化が起きた。笑顔が人なつっこいおばあちゃんが切り盛りする昔ながらの店に、カメラを手にした若い男性が遠く県外からも訪れるようになった。
 アニメやゲームに登場する実在の街をファンが旅し、地域と交流する「聖地巡礼」という。店主の梅田芳子さん(83)は驚きながらも「若い人たちとおしゃべりができて元気をもらえる。ありがたいこと」と歓迎する。
 掛川が舞台になったのは、テレビアニメ「勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。」(勇しぶ)。同市出身・在住の女性作家左京潤さん(31)の同名人気ライトノベルが原作だ。「若者と労働」というテーマにファンタジーを取り入れたコメディーで、掛川の街は「王都」、掛川駅は「王都中央駅」に。掛川城や「炭焼きレストランさわやか」、遠州弁のキャラクターも登場し、地元民をニヤリとさせる。

「勇しぶ」ファンのためにヒロインの等身大パネルを自作した重田さん。アニメには掛川城も登場する=掛川市城下で((C)2013左京潤・戌角柾・富士見書房/マジックショップ・レオン王都店)
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 すいのやには熱々のおでんもあり、地元の子どもからお年寄りまで集う。勇しぶでは主人公らの憩いの場として描かれ、昨秋にはヒロイン「フィノ」を演じる声優田所あずささん(20)との聖地巡礼ツアーで約三十人が訪れた。
 放送が深夜だったこともあり、地元での知名度はまだまだ。行政や観光協会によるPRやイベントもない。城近くで甲冑(かっちゅう)販売を営む重田和義さん(44)は「掛川らしく自然体でもてなしたい」と、アニメのファンや製作元との窓口役を買って出た。
 アニメファンだった重田さんは勇しぶの魅力にはまり、各地の聖地巡礼の情報を集めた。年間数十万人を集める成功例の陰で、イベントの準備や運営の負担で地域が疲弊したり、経済効果だけを当て込んだ魅力のない作品がファンの反感を買ったりと、多くの失敗があることも知った。
 その教訓もあり、聖地以外にも掛川の歴史や文化を知ってもらおうと、ファンに既存の街歩きマップを渡すなど、重田さんらの活動は地道だ。「アニメというだけで色眼鏡で見る人もいるが、触れ合うことでファンの純粋さを知った」と話す。

 アニメの世界が「歴史の街・掛川」とどう溶け合っていくか。新たな魅力づくりが始まった。
(小柳津心介)

<聖地巡礼> 1990年代初めから見られ、新たな地域おこしとして注目されている。対象は1000作品以上。アニメ「氷菓」など経済効果が数十億円規模の例も。「ガールズ&パンツァー」の舞台、茨城県大洗町の取り組みは昨年、観光庁の「今しかできない旅がある 若者旅行を応援する取組表彰」で長官奨励賞を受賞した。
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静岡は萌えているか?(番外編) 岡本健・奈良県立大講師に聞く 2014年2月4日

◆協働し観光資源に

 アニメやコスプレ、萌(も)えキャラなどのポップカルチャーを地域おこしにどう生かすのか。アニメの「聖地巡礼」など、物語性やテーマ性を観光資源として活用する「コンテンツツーリズム」研究の第一人者、奈良県立大講師の岡本健さん(30)に聞いた。

アニメなどを活用した地域おこしの可能性を語る岡本健さん=奈良市の奈良県立大で
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-ポップカルチャーをどう生かせるか。

 現状でうまく観光振興ができている地域は「無理にやらなくていい」となってしまうこともある。だが、それでいいのか。富士山は別格だが「何かがある」というだけでは人は動きにくくなっている。
 価値観や趣味が多様化した現代で、アニメなどのコンテンツは人を呼ぶ一つの手段となり、市場を開拓できる。文化資源という点では、富士山とも等価だ。海外から見れば、歌舞伎とアニメは「どちらが上か」ではなく「どちらも好き」となる。着物文化をアニメから学ぶ人もいる。
 コンテンツにはどうしても寿命や限界がある。それを言い訳に何もしないのも一つだが、普通来ないような若い人が来るきっかけにはなる。その人が何度も来てくれるようになれば、結果は大違いだ。

 -いわゆる「オタク」層と、地域住民の相互理解が課題だ。

 アニメなどのファンが何を楽しんでいるのかを翻訳し、地域の人に理解させる取り組みが必要だ。溝がありそうだと隔離しては駄目。直接話をしたり、その文化を実際に見たりすると「案外いいじゃないか」というエピソードが増え、おもてなしの仕方も増える。それでも受け付けない人もいるが、そこまでいくとアニメファンなどに限った話ではない。

 -静岡の可能性は。

 東京、名古屋の大都市圏の間という地の利があり、富士山や温泉、海もある。昔からある資源でも、見せ方は何通りもある。コンテンツのちょっとした芽を、うまく育てていくことが大事だ。
 企業だけでなく、地域住民が自分たちでコンテンツをつくっていくこともできる。キャラクターやお話など、地域を分かってもらえる軸になるものを作る取り組みが必要で、地域がアニメの製作委員会に入ることなどもあり得る。いい形で協働していけば、未来は明るい。
(聞き手・小柳津心介)

<おかもと・たけし> 1983年、奈良市生まれ。北海道大大学院(観光創造専攻)修了。観光学や社会学の観点からコンテンツツーリズムを研究する。奈良県立大地域創造学部講師。著書に「n次創作観光」など。

(終わり)

以上 中日新聞 トップ > 静岡 > 地域特集 > しずかるNow > 記事一覧 > 2014年の記事一覧
から転載させていただきました。

履歴
2014年2月10日 作成

by fureshima2223 | 2014-02-10 12:48 | 徒然なるままに | Comments(0)
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舞台探訪と地域紹介、主な内容は富山県・石川県・長野県と小諸市飯能市郡山市の舞台ですが、他の地域にも出かけるかもしれません。


by fureshima2223
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